はじめに

パイロットや管制官が使用する「空の地図=航空図」には、目に見えない無数の通過点「ウェイポイント(Waypoint)」が設定されています。
これらは通常、アルファベット5文字で表される無機質な座標データです。

広大な空の世界地図をよく見てみると、そこには航空関係者たちの遊び心が爆発した、とんでもなくユニークな名前が隠されていることがあるのです。

わたしはこれが一番のお気にいりなのですが・・航空ファンの間で伝説となっているのが、日本の福岡空港上空にあるルート。

なんと、着陸に向けて「KIRIN(キリン)」「EBISU(エビス)」「LAGAR(ラガー)」といった、まるで居酒屋のメニューのようなビール銘柄のポイントが一直線に並んでいるのをご存知でしたか?

空にあるのは、日本のビールだけではありません。
世界に目を向ければ、カリフォルニアのワインや、ケンタッキーのバーボンなど、その土地の名産品にちなんだ「お酒のウェイポイント」が実在するのです。

この記事では、そんな空の地図に隠された「美味しい」秘密を解き明かしながら、世界中に点在するユニークなウェイポイントを巡る「世界一周はしご酒フライト」をご案内したいと思います。
(どんだけ、酒好きなんだか💦)

ウェイポイントとは

ウェイポイントは、航空機が飛行するルート(航空路)を構成する特定の地点です。
昔は地上の無線施設(VORなど)上を飛ぶのが主流でしたが、現在はGPSや高性能な航法装置(FMS)の発達により、海の上や無線の届かない場所にも自由に設定できるようになりました。

  • 構成要素: 具体的な緯度と経度で定義されています。
  • 表記: アルファベット5文字で表されます(例: KOSAK)。
  • 役割: 航空機はこれらの点を「点つなぎ」のように結んで飛行します。

ウェイポイントの名前は、国際民間航空機関(ICAO)のルールで「発音可能なアルファベット5文字」と決められています。
世界中で重複しないように調整されていますが、日本では地元の名産品や地名をもじったユニークな名前が多く、航空ファンの間でも人気があります。


では、今回は、世界の空に点在する「お酒シリーズ」をみていきたいと思います。
このフライトプランは、総移動距離約15,900海里(約29,400km)、総飛行時間約34時間に及ぶ壮大な「はしご酒の世界一周」です。


第1区間:日本の「とりあえず生!」フライト

✈福岡 (RJFF) ➡ 東京成田 (RJAA) 距離: 約 500 nm (926 km) 飛行時間: 1時間15分

福岡の居酒屋街を眼下に離陸。
KIRINEBISULAGARMALTS という黄金のビール・ウェイポイント街道を上昇しながら通過します。
ベルト着用サインが消えたら、まずは日本のビールで乾杯です。
成田着陸前には千葉上空の SAKKE(日本酒)ポイントも通過し、和酒で心を整えて太平洋横断に備えます。

             福岡離陸時のコックピット視点です。
   夕暮れの空に、これから通過するビールのウェイポイントが幻想的に浮かび上がっていますね。

ちなみに、近くにはお酒のお供として EDAME(枝豆)や SORAM(空豆)なども存在したことがあります。

第2区間:太平洋横断とワインの聖地へ

✈東京成田 (RJAA) ➡ サンフランシスコ (KSFO) 距離: 約 4,500 nm (8,334 km) 飛行時間: 9時間30分

日付変更線を越えるロングフライトです。
機内では仮眠を取りつつ、到着前のメインイベントに備えます。
カリフォルニア州に入ると、ナパ・バレー上空で CORKK(コルクを抜いて)、VNYRD(ブドウ畑を眺め)、ZINF(赤ワインの香りを楽しむ)という優雅なアプローチが待っています。

             ナパ・バレー上空のアプローチ。

第3区間:アメリカンな「男飯」ルート

✈サンフランシスコ (KSFO) ➡ ルイビル (KSDF) 距離: 約 1,800 nm (3,334 km) 飛行時間: 4時間00分

アメリカ大陸を横断します。
カンザスシティ上空では BARBQRIBBSSMOKE という、よだれが出そうなポイントを通過。


欧州伝統の味へ、大西洋横断

✈ルイビル (KSDF) ➡ プラハ (LKPR) 距離: 約 4,200 nm (7,778 km) 飛行時間: 8時間45分

再びロングフライトで大西洋を渡ります。
目指すはビールの本場、チェコ共和国。
ピルスナービールの発祥地プルゼニ(Pilsen)の近くにある、その名もズバリ PILSN と、欧州版の LAGAR ポイントを通過します。
日本のラガーとは一味違う、本場の苦味とコクに思いを馳せましょう。

第5区間:帰国、そして〆の飯

✈プラハ (LKPR) ➡ 東京羽田 (RJTT) 距離: 約 4,900 nm (9,075 km) 飛行時間: 10時間30分

いよいよファイナルレグです。
ユーラシア大陸を横断する最長のフライト。

連日の「はしご酒」で疲れた体を癒やすため、飛行ルート上にあるWATERCOFEEBEDDS(ベッド)といったポイントを概念的に通過しつつ体調を整えます。
そして日本上空、最後の最後で通過するのが GOHAN。やっぱり〆は白飯に限りますね。

        ああ、日本に帰ってきたな・・という安心感が漂っています


まとめ

ウェイポイントは単なる座標データですが、その名前には「パイロットや管制官が言いやすく、聞き間違えない名前」という実用性と「遊び心」が共存しています。

フライトレーダー24などのアプリを見ながら、「今、BACON(ベーコン)の上を飛んでいるな」などと確認するのも、空の楽しみ方の一つですね。