
空を降りた飛行機たちは、どこへ行くのでしょうか。
アメリカの乾いた砂漠には役目を終えた機体が静かに眠る
「飛行機の墓場」と呼ばれる場所があります。
そこは終わりでありながら、もう一度、空へとつながる不思議な場所なのです。
飛行機の墓場とは?
飛行機の墓場とは、退役した航空機を保管・解体・再利用のために集めた場所。
多くはアリゾナ州やカリフォルニア州など、乾いた砂漠地帯にあります。
雨が少なく湿度が低いため金属の腐食を防ぎ、
地盤の硬さから巨大な機体をそのまま支えることができます。
アリゾナ州ツーソンにあるデビスモンサン空軍基地は、世界最大の飛行機の墓場として知られています。
約4,000機もの軍用機が整然と並び、果てしなく続く銀色の翼が太陽の光を反射しています。
「墓場」だけど、「宝の山」でもある
「墓場」という言葉には、どこか終わりの響きがあります。
でも、飛行機の墓場は単なる終着点ではありません。
ここではまだ使える部品が丁寧に取り外され、再び空を支えるために使われます。
エンジン、電子機器、座席、ランディングギア。
それぞれが再整備され、新しい飛行機の一部として生まれ変わります。
つまり、ここでは「命のバトン」が受け渡されているのです。

さらに近年では、部品をアップサイクルして家具や雑貨として再利用する動きもあります。
たとえば、元JAL機の窓を加工して作られた時計や、シート素材を使ったバッグなど。
かつて世界を飛び回っていたその素材が、今は誰かの暮らしの中で静かに時を刻んでいます。

モハーヴェの空の下で眠る飛行機たち
カリフォルニア州のモハーヴェ航空宇宙港は、世界でも有名な飛行機の墓場のひとつです。
広大な砂漠の上に、退役した民間旅客機たちが肩を寄せ合うように並んでいます。
中には、かつて日本の空を飛んだJALやANAの機体もあります。
風にさらされながらも、機体たちは翼を広げたまま。
「もう飛ばない」けれど、「飛ぶ姿勢のまま」眠っているようにも見えます。
この光景は、「廃墟のようでいてどこか温かい」
それはきっと・・・空を飛んでいた姿が、私たちの中での記憶され続けているからなのでしょうね。
コロナ禍で“仮眠”をとった飛行機たち
「飛行機の墓場」は、永遠の眠りの場所——。
そう思われがちですが、実は「仮眠の場所」になることもあります。
2020年、新型コロナウイルスの影響で世界中の空が止まったとき、多くの航空会社が機体を一時的に運航停止にしました。
その避難先となったのが、ここ、モハーヴェやビクタービルなどの砂漠地帯です。
機体は再稼働できる状態で丁寧に保管され、整備士たちが定期的にエンジンを回して点検を行いました。
そして、世界が再び動き出すとき、彼らもまた空へ帰っていったのです。
「墓場」というより、再出発の「待合室」・・・そう呼ぶほうが、しっくりくると思います。
風化と再生、そのあいだにあるもの
砂漠に並ぶ飛行機の写真を見ると、わたしはいつも不思議な気持ちになります。
そこにあるのは朽ちていく姿ではなく、静かに時間を抱きしめているような存在感です。
この翼たちは、どれほどの空を見てきたのでしょう。
朝焼けの雲、夜の稲妻、離陸を見送る人々の笑顔——。
そのすべてを、彼らは記憶しているように見えます。
そして、その記憶は、リサイクルされた部品の中にも受け継がれ、形を変えても、空の記憶は生き続けるのです。
✈️ 出典:世界一有名?な「飛行機の墓場」に潜入!
乗りものニュースモハーヴェ空港のフォトリポート
GIGAZINE廃棄部品を商品にアップサイクル
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