
飛行機の機長というと、どうしても「空のスーパーヒーロー」みたいなイメージを持ってしまいます。
颯爽と操縦席に座り、スイッチをポンポン押して、
「それでは皆さま、行ってきます」 そして、離陸していく——そんな姿です。
2025年8月16日
アメリカのデルタ航空で印象的な出来事がありました。
アトランタ発ラスベガス行きのDL466便の機長が、離陸直前に「この機体では飛ばない」と判断し、運航を拒否したのです。
整備士さんたちが再点検した結果は「異常なし」
つまり、機体は健康そのもの。
健康診断オールAなのに、本人だけが「なんか調子悪い気がする」と言っている、感じでしょうか?
では、なぜ機長は飛ばなかったのでしょうか。
「異常なし」でも飛ばないのは、プロの「第六感」
航空の世界では、「No fault found(異常なし)」は珍しくありません。
機械は気まぐれですし、センサーもたまには寝ぼけます。
「さっきまで赤ランプついてたのに、今は元気です!」
みたいなことも平気で起こります。
それでも、機長が「なんか変だな」と感じたら、飛ばないという選択肢が堂々と存在します。
なぜなら、違和感は立派な情報だからです。
この時のデルタ航空の機長もそう感じたようです。
機材はボーイング757型機。
この機長は前日に同じ機体を操縦しており、その際に昇降舵の動きにわずかな違和感を感じたといいます。
整備部門は翌日までに9時間かけて点検を行い、「異常なし」という結論を出しました。
それでも、機長は「直感的に」この機体を信頼できなかった、というのです。

整備記録は安全を示していても、機長は「飛ばない」と宣言し、搭乗を中止。
乗客に向けて理由を説明し、代替機が手配されました。
結果として出発は約1時間遅れましたが、乗客の多くは拍手を送り、機長の判断を支持したといいます。
「安全」は誰が決めるのか
この出来事を知って、改めて考えさせられました。
航空機の安全性は、整備・運航・管制など、多くの専門職の努力によって保たれています。
しかし最終的に「飛ぶか、飛ばないか」を決めるのは機長、です。
飛行機を飛ばさないという判断は、簡単ではありません。
乗客は待っていますし、スケジュールは乱れますし、会社からの視線も痛いです。
「機長、本当に飛ばないんですか…?」
という空気が漂うこともあるでしょう。
整備士がどれだけ完璧に検査をしても、人間が操縦する以上、「感覚」の部分を完全に数値化することはできません。
それでも、機長は安全を最優先にします。
航空業界では、 「安全はすべてに優先する」 が徹底されています。
これは単なるスローガンではなく、日々の運航判断に深く根付いています。
飛ばないという決断は、責任から逃げる行為ではなく、むしろ責任を引き受ける行為だと思うのです。
「飛ばない勇気」が社会にも必要だと思う
このニュースを聞いて、私は「飛ばない勇気」という言葉を考えました。
私たちの仕事や生活の中にも、似たような場面があります。
無理をして進もうとするときほど、「今日はやめておこう」という判断が必要です。
数字や上司の言葉よりも、自分の中の小さな違和感を信じること。
それが、長い目で見れば最も安全な「航路」につながるのかもしれません。
デルタ航空の機長は、整備データに逆らってまで「飛ばない」と決断しました。
その判断が正しかったかどうかは、記録には残らないでしょう。
それでも、彼の決断が伝えたメッセージ・・・
「安全とは、人間の心が守るものだ」という事実は、きっと多くの人の胸に残ったはずです。
最後に:あなたの“飛ばない勇気”はどこにありますか
私たちは日々、何かしらの「決断」を迫られています。
仕事の決断、人間関係の選択、新しい挑戦。
その中で、 「今日は飛ばない(止めておこう)」 と決めることは、決して後ろ向きではありません。
むしろ、未来の自分を守るための、大切な判断なときもあるはず。
デルタ航空の機長が示したように、 飛ばないという選択は、プロフェッショナルの証であり、成熟した人の強さでもあります。
わたし達の人生にも、そんな静かに息づいている「勇気」が存在しているはず、です
参考記事
・Delta Air Lines Captain Rejects Boeing 757-200 Despite Maintenance Log Saying “No Issue Found”