
2025年10月下旬、アメリカの空の動きが不安定なまま続いています。
背景にあるのは、これまで何度も米国社会を混乱させてきた、「政府機関の一部閉鎖(Government Shutdown)」です。
FAA(連邦航空局)やTSA(運輸保安局)の職員の多くは、航空の安全確保に不可欠な「エッセンシャルワーカー」
しかし、今回のシャットダウンによって、無給のまま勤務を続ける状況が長期化してしまいました。
生活への影響が現実となり、欠勤や早退が増え、航空管制システム全体にしわ寄せが起こっています。
遅延が日常化したアメリカ国内線
秋の旅行シーズンにも関わらず、日によっては5,000便を超える遅延が発生。
とくに大都市の航空ネットワークは渋滞状態です。
ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスなど、旅客の多い空港では地上待機や離陸順番待ちが当たり前に。
運航本数を抑えるしかない局面も出てきています。

欠航は一部ですが、「結果として乗客が行きたい場所に着けない」という意味では、遅延の長期化は欠航と同じ痛みを生んでいます。
航空の安全を守るために、空の流れをゆっくりに
安全性について、FAAは「確保されている」と説明しています。
その代わり、1便ごとの間隔を広げる=処理できる便数を減らすことでリスクを避けています。
現場は丁寧に、慎重に、しかしギリギリの緊張感の中で業務を続けています。
一方で、採用訓練や設備点検など「将来の安全」に関わる業務は停止、あるいは遅延してしまっているとも報じられています。
現場にある「生活」の問題
政府閉鎖は政治の問題ですが、影響を受けるのは「人」であるという現実は揺るぎません。
報道では、管制官や保安職員が
「家賃が払えない」「副業を探している」
と語るケースも紹介されています。
生活が不安定になれば、心理的ストレスは避けられず、それは安全確保にも影を落としかねません。
「空の交通を守るプロ」たちが無理をしている。
これが今のアメリカの空の背景です。
これからアメリカへ旅行する人へ
日本からアメリカへ渡航予定のある人は、
次のポイントを意識しておくと安心です。
・乗り継ぎは余裕をもって(最低3時間は安全)
・航空会社のアプリで運航情報を逐次チェック
・保険の「乗り継ぎ遅延補償」も確認
・混雑時は保安検査に長い時間を見込む
「無事に飛ぶこと」そのものが、人々の努力の上に成り立っているというのは言うまでもありませんが、
その現実を少しだけ意識できる旅になるかもしれません。
長期化したときの懸念
給与支払日を迎えても、改善がない場合には欠勤がさらに増え、遅延は一段と悪化する可能性が指摘されています。
“安全のための流量制限”が、“安全のためのフライト大幅削減”へと変わってしまう未来も否定できません。
それでも飛行機は飛ぶ。だからこそ…
アメリカの航空は、世界最大のネットワークを支えています。
その巨大な空が不調になると、世界の空にも波紋が広がります。
旅行者にとっても、航空会社にとっても、そして働く人にとっても、一刻も早い解決が望まれます。
✈️ 参考(出典記事)
Reuters: 「More than 8,000 US flights delayed as air traffic control absences persist」
AP News: 「flight delays spiked to over 6,000… staffing issues at airports, many controllers working unpaid」
Business Insider: 「Historically about 5% of delays due to staffing; now ~53%」
FOX Business: 「Major US airports issue ground stops… Newark, Boston, San Francisco due to staffing shortages」
Guardian: 「Staffing shortages at airports … delays across US, including Chicago, Boston, Dallas, etc」