
最近、インドとアメリカを結ぶ国際線フライトの裏側で、ある奇妙な現象が話題になっているのをご存知でしょうか?
それは、空港での「車いすの大行列」です。
シカゴなどの空港で、インド行きのフライトの搭乗口に向かう際、まるでマラソンのゴール後のように、たくさんの人が車いすに座ってゾロゾロと並んでいる動画がSNSで拡散されました。
その列はあまりにも長く、そして、車いすに乗っている人たちの中には、どう見てもスタスタ歩けそうな方がちらほら…。
「あれ?本当に大丈夫ですか?」と声をかけたくなりそうな光景だったそうです。
驚きの数字!乗客の3割が「お手伝い」をリクエスト?
この現象の裏側には、航空会社が頭を悩ませるほどの驚きのデータがあります。
特にインドと北米を結ぶフライト、例えばエア・インディアの一部便では、なんと乗客の最大30%が車いすでのサポートをリクエストしているというのです。
これは、飛行機1機に300人乗っているとしたら、100人近くが車いすを求めている計算になります。
もちろん、インド・アメリカ路線は、里帰りや家族訪問のために長距離を移動する高齢の乗客が多いという背景があります。
純粋にサポートが必要な方が多いのは当然です。
しかし、航空会社の関係者や空港スタッフは「いくらなんでも多すぎる…」と首をひねっています。
この数字の異常な増加は、「不正利用」の疑惑にまで発展してしまいました。
💨 車いすが「ファストパス」になる理由
では、なぜ元気そうな人まで車いすをリクエストするのでしょうか?
それは、車いすサービスが空港の「ファストパス」になってしまうからです。
空港はとにかく広大で、チェックイン、保安検査、出国審査、そして搭乗口までの移動…
すべてが長距離の戦いです。そこで車いすをリクエストすると、以下のVIP待遇が(原則無料で)手に入ってしまいます。
- 優先搭乗:混雑を避け、誰よりも早く機内へ。
- 迅速審査:長い行列を横目に、専用ルートでスピーディーに入国・出国審査を通過。
- 至れり尽くせりのエスコート:ゲートからゲートまで、専用スタッフが付き添ってくれます。
しかも、アメリカの法律では、「医学的な証明がなくても、助けが必要と要求すればサービスを提供する」ことが航空会社に義務付けられています。
つまり、「無料で、手間なく、優先される」という三拍子が揃ってしまい、一部の心無い利用者にとっては「使わない手はない裏技」になってしまったのです。
本当に困っている人への影響を考えると…
この不正利用が本当に深刻なのは、金銭的なコスト(航空会社は一回あたり約30~35ドルの費用を負担しているそうです)やフライトの遅延以上に、本当に車いすを必要としている方々への影響が出ていることです。
「大行列」が発生すると、航空会社は介助スタッフと車いすをかき集めるのに大わらわ。
その結果、本当に体の不自由な方が「車いすが足りない」「スタッフが来ない」と長時間待たされ、不便を強いられる事態が起きています。
便利なサービスを悪用する行為が、そのサービスを本当に必要としている人々を苦しめてしまう。
これは、旅の優しさや思いやりが試されている状況と言えるでしょう。
優しい空の旅のために、何ができる?
この問題を受け、インドでは「不正利用を防ぐために有料化すべきだ」という提案も出ています。
たしかに、安易なリクエストに歯止めをかける効果はあるかもしれません。
しかし、サービスが悪用されるたびに「有料化」や「規制強化」に進むのは、なんだか寂しい気もします。
旅は、文化と文化が触れ合う素晴らしい体験です。
空港でのサポートは、困っている人には惜しみなく提供されるべき「優しさの資源」です。
この資源を、優先搭乗というちょっとしたメリットのために、枯渇させてしまうのは悲しいことです。
「その車いす、本当に私が必要としている?」
一人ひとりが立ち止まって、このシンプルな問いかけをすることで、皆が気持ちよく、本当に必要としている人が安心して空の旅を楽しめるようになる。そんな優しいフライトが、これからも増えていくことを願ってやみません。
皆さんも、もし空港でサポートが必要な方を見かけたら、ぜひご自身の「優しさの資源」を分けてあげてくださいね!
おまけ
わたしも現役時代、この車いすの「鬼リクエスト」に悩まされたひとり、です。
このお話はインドのフライトですが、某東南アジアの方々も同じような状況でした。
毎日、50人、60人と車いすのリクエストが入ってくるんです。
しかも、ほぼターミナルが違う航空会社からの乗り継ぎ。
飛行機を降りて→車いすに乗る→バスに乗る→バスを降りる→車いすで移動・・こんな状態なので、待てど暮らせど現れず、搭乗時間ギリギリなんて日常茶飯事でした。
ある日、途中まで呼び込みに行くと、あまりにのんびりしているので
「あと、5分で出発しますよー。間に合わなかったら、ドア閉めますからねー!」
と集団に声をかけると・・・
なんと、一斉に!立ち上がって、歩く・・いや、走り出しましたから💦
まるで、奇跡の「クララが立った!」でした。
参考記事
Air India Wheelchair Surge at Chicago Raises Questions About Scam or Abuse