
2026年1月13日。
ボーイングとデルタ航空は787ドリームライナーを最大60機直接発注したことを発表しました。
デルタ航空はB787-10型機を30機購入し、さらに787型機の大型派生型を最大30機購入、需要の高い大西洋と南米路線における事業拡大に投入する計画といいます。
また、今回エンジンはGE製「GEnx」を選択しました。
これは、驚きのニュースでした。
というのも、デルタ航空がボーイングに787を直接発注するのは今回が初めてなのです。
かつて経営統合したノースウエスト航空からB787-8の発注を引き継いでいましたが、2016年に一度キャンセルしており、今回、改めてより大型の「-10」を選定して導入することになったのです。
デルタ航空が長年の「エアバス・シフト」から一転、なぜ今、B787-10に踏み切ったのか?
今回はその理由を分析してみました。
ボーイング767の「待ったなし」の更新
デルタ航空は、現在旧式のボーイング767-300ER/400ERを大量に保有しており、これらは数年以内に退役期限を迎える予定です。
長年、機材更新の課題を抱えてきましたが、主力のエアバス(A330neoやA350)は、現在受注が積み上がっており、デルタ航空が望むスケジュールでの大量導入が困難になっているといいます。
また、B787-10は、787ファミリーの中で最も胴体が長く、座席あたりのコスト(燃費効率)が極めて優秀です。
B787-10型機は、現在運用している旧型機(767など)に比べ、燃料消費量を25%削減できる高い効率性が評価されています。
このように大西洋路線や南米路線など、超長距離ではないけれど需要の多いB767の主戦場を置き換えるには、A350よりもB787-10の方が経済的メリットが大きいと判断されたようです。

政治的要因とトランプ政権への配慮
また、今回の発注は「トランプ政権への配慮」という側面も強く指摘されています。
トランプ政権下での欧州製航空機(エアバス)への関税リスクを避けるため、アメリカ製のボーイング機、さらに同じくアメリカ企業のGE製エンジン(GEnx)を組み合わせた機材を選択したという見方です。
米国大手航空会社として、自国の製造業を支援する姿勢を示す政治的なパフォーマンスの意味合いも含まれている可能性があります。
リスク分散
これまで、エアバスへの依存を強めてきたデルタ航空ですが、Dan Janki CFOは、
「ワイドボディのポートフォリオに多様性を持たせる」と述べています。
特定のメーカー、エアバスの納期遅延や不具合に左右されないよう、ボーイングとの関係も維持しておく「保険」としての側面があるようです。
ボーイングによる強力なセールス
ボーイングとしても、長年エアバス派だったデルタ航空を奪還することは象徴的な意味を持つのではないか、という分析もありました。
納期を2031年からとしたことで、現在の737 MAXの不具合や生産遅延問題を落ち着かせた後の「次世代の柱」として、デルタ航空に対し非常に有利な価格条件や導入条件を提示したと推測されているのです。
今回のこのデルタ航空の決断は、
「ボーイングへの完全回帰」というよりは、「機材更新のデッドライン」「経済性の追求」「関税などの政治リスク回避」という現実的な要因が重なった結果であると言われています。
さて・・ここで、その他の米系航空会社のB787の導入状況をまとめてみたいと思います。
米ビッグ3の「787戦略」比較まとめ
ユナイテッド航空 (United Airlines)
「787の全モデルを使い分ける王者」
- 保有状況
787-8, -9, -10の3機種すべてを運用しており、さらに100機以上の追加発注を行うなど、787への依存度が最も高い。 - 戦略
① 「-8」「-9」で世界を広げる: 航続距離の長い「-8」や「-9」を使い、他社が飛ばさないような超長距離の地方都市(サンフランシスコ〜シンガポールなど)を開拓。
② 「-10」はハブ間輸送: 今回デルタ航空が発注した「-10」をユナイテッド航空はすでに運用中。
主に大西洋路線や、シカゴ・ニューアークといった自社ハブ間の「大量輸送」に特化。 - 強み
3サイズ揃えることで、需要に合わせて機材を柔軟に入れ替えられる規模を追求している。
アメリカン航空 (American Airlines)
「中型機としての効率重視」
- 保有状況
787-8と787-9を主力とし、最も大きい「-10」は導入していない - 戦略
① 機材のシンプル化: かつて保有していたA330や767を早期に退役させ、ワイドボディを「787」と「777」に絞り込んでいる。
② 柔軟なネットワーク: 「-8」を南米や欧州の中規模都市へ、「-9」を主要な国際線へ投入。
デルタ航空やユナイテッド航空に比べ、機材を統一することでメンテナンスコストを下げる効率性を重視している。 - 特徴
デルタ航空が選んだ「-10」ではなく、より汎用性の高い「-9」を追加発注しており、輸送量よりも「どこへでも飛ばせる柔軟性」を優先している。
デルタ航空 (Delta Air Lines)
「エアバス主体のなかのピンポイント補完」
- 保有状況
これまで787は「ゼロ」。今回、最大サイズの「-10」のみをピンポイントで発注。 - 戦略:
① 「最高効率」のみを摘み食い・・・ユナイテッドのように全サイズを揃えるのではなく、燃費と座席数が最も有利な「-10」だけを導入。
② A350との役割分担: 超長距離(日本・アジア・豪州)はエアバスA350に任せ、需要が極めて多いが、距離はそこまでではない大西洋路線に「787-10」を充てるという、極めて戦術的な使い分け。 - 強み
既に他社が運用して「熟成された」機体(787-10)を、最も必要とされる路線にだけ投入する「後出しジャンケン」的な合理性が特徴です。
さいごに
ちょっとデルタ航空に辛口な比較コメントになってしまいましたが、そこがしたたかな経営戦略を持つデルタ航空ならではなのかもしれませんね。
デルタ航空にとって787-10は「単なるエアバスの代わり」ではなく、「満席にすることが容易で、航続距離よりも収益効率が最優先される大西洋路線」において、利益を最大化するための戦略的武器として選ばれたと言えます。
さて・・私たち乗客にとってはどう変わるか?
経営戦略だけでなく、私たち利用者にとってもこのニュースは朗報ではないでしょうか?
787ドリームライナーは、従来の機体よりも客室の気圧が高めに設定され、湿度も保たれる設計になっています。
「飛行機を降りた後の疲れ方が全然違う」と言われるこの快適性が、デルタ航空の最新シートで体験できる日は近いです。
これまで「古い767だと少し窮屈だな……」と感じていた大西洋路線や南米路線が、圧倒的に快適でプレミアムな空の旅へとアップグレードされることになりそうですね。
皆さんは、デルタ航空の新しいB787で、どこへ飛んでみたいですか?
参考記事
・Delta adds Boeing 787 Dreamliner to widebody fleet(Delta News Hub)
・Delta Air Lines Orders up to 60 Boeing 787 Dreamliners to Grow, Modernize Widebody Fleet(Boeing News Room)
・動画「Would The Boeing 787-10 Really Be A Good Choice For Delta Air Lines?」