ジェットスター・ジャパン、新ブランドに 豪カンタスが資本撤退へ」(時事通信社)

日本の空を「オレンジ色」に染め上げ、私たちの旅をぐっと身近にしてくれたあの翼が、大きな曲がり角に立とうとしています。

2026年2月3日。
舞い込んできたのは、ジェットスター・ジャパンの名称変更と、生みの親である豪カンタスグループの撤退という衝撃のニュースでした。
「LCC=安かろう悪かろう」
「LCCだから安全面が不安」
という声を、数字で真っ向から否定してきたのがジェットスター・ジャパンという会社。

実は、安全性については、航空業界で最も権威のある格付けサイトの一つ「Airline Ratings」において、極めて高い評価を得ているのです。
2026年版の「世界で最も安全なLCCランキング」において、ジェットスター・グループ(ジェットスター・ジャパン含む)は、香港エクスプレスに次ぐ世界第2位に選出されています。
オーストラリア・カンタス航空は、長きにわたり「世界で最も安全な航空会社」の常連。
ジェットスター・ジャパンもその厳しい安全管理システムや整備体制を共有しており、LCCでありながらフルサービスキャリアと同等、あるいはそれ以上の安全基準を維持していると評価されているようです。

一方で、定時運航率においては国内では苦戦しており、国内他社と比較すると厳しい数字が出ています。
国土交通省が発表した2024年度のデータなどでは、定時出発率が国内10社の中で最下位付近となることもありました。
しかし、2025年後半のデータでは、定時運航率が95%を超える月もあり、運営の安定化が進んでいた矢先の今回の「名称変更・カンタス撤退」という事態。

なぜ今、この決断が下されたのか。

今回は、ジェットスターが日本の空に革命を起こした誕生の秘話から、カンタスがもたらした功績、そして別れの時を迎えた現在地まで。
一つの時代の終焉と、新たな旅立ちについて探ってみたいと思います

誕生:日本の空を変えた「オレンジの衝撃」

2012年。
日本の航空業界に、鮮やかな「オレンジ色」の翼がお目見えしました。
日本航空と、オーストラリアの雄・カンタスグループという異色のタッグで誕生した「ジェットスター・ジャパン」
それは、当時の日本にとってまさに・・「空の黒船」(この表現が適切かどうかは・・定かではありませんが)

それまで「飛行機=高価な乗り物」というイメージが強かった業界に、突然、「最低価格保証」という武器を携えて乗り込んできたような気がしたものです。
缶コーヒー1本分、あるいは飲み代一回分程度の運賃で、成田から北海道や沖縄へ飛べる……。当時のその衝撃はかなりのものでした。

「それって、本当に大丈夫なの?」
と、安全を不安視する声が上がったのも事実ですが、若者やビジネスパーソン、そしてこれまで旅を諦めていた人たちも気軽に空の旅を楽しめるようになり、今では日本にはなくてはならない「LCC文化」を根付かせた、先駆者と言ってもよいのではないでしょうか。

功績:日豪の架け橋と、国内LCCとしてのプライド

ジェットスター・ジャパンが積み上げた功績は、単なる安売りだけではありませんでした。
特筆すべきは、カンタスグループから直伝された「世界最高峰の安全基準」です。
先ほども述べましたが、世界的な安全性格付けでも常に上位にランクインし、「安かろう悪かろう」というLCCへの偏見を、数字と実績で覆し続けました。

また、オーストラリアと日本を結ぶ架け橋としての役割も見逃せません。
カンタスのノウハウを活かしたスムーズな接続は、多くの日本人観光客をオセアニアへ、そして多くの訪日客を日本の地方都市へと運んだネットワークは素晴らしいものがありました。
成田を拠点に、日本の隅々まで網の目のように張り巡らされた路線網は、今や私たちの旅に欠かせないインフラとしてのプライドに満ちていると思うのです。

転換期:コロナ禍の荒波と、資本関係の歪み

しかし・・・。
順風満帆に見えたこれらの航路に影を落としたのが、そうです、2020年から世界を襲ったパンデミック。
人々の移動が止まり、航空需要は激減。
この未曾有の危機の中で、パートナーである日本航空とカンタスの間には、少しずつ「戦略の温度差」が生じ始めました、と言われています。

JALが国内LCC戦略の再構築を急ぐ一方で、オーストラリア本国のカンタスは、より収益性の高い自国市場や中長距離路線へのリソース集中を模索するようになりました。
今回の資本撤退という決断の裏には、コロナ禍を経て浮き彫りになった、両社の未来図の違いがあったと言えるでしょう。14年にわたる「日豪連合」は、時代の波に押される形で、その役目を終えることとなってしまったのです。

未来:新たな名前で飛ぶ、第二の創業へ

そして、ジェットスター・ジャパンは「第二の創業」とも言える大きな転換点を迎えることとなりました。

今後のロードマップによれば、2026年10月には待望の新ブランド名称が発表され、2027年6月には新体制への完全移行が予定されています。
日本政策投資銀行を新たなパートナーに迎え、日本航空主導の「日本独自のLCC」として再出発するのです。

個人的に気になるのは、これまで愛されてきた「オレンジの星」と、カンタスがもたらした「世界基準の安全性」というDNAがどうなるのか、という点です。
ブランド名は変わっても、培われた高い安全意識は変わることなく、むしろ日本の細やかなニーズに応えるサービスへと進化していくことを期待しています。

一つの時代の終焉は、新しい空の物語の始まりであるとよく言われます。
私たちが次に乗り込むその翼には、どんな名前が刻まれ、どんな景色を見せてくれるのでしょうか。
新名称が発表されるその日まで、今は名残惜しさを感じつつも、新しい翼の発表を楽しみに待ちたいと思います。


参考記事
Jetstar Japan To Rebrand As Qantas Sells Final Stake To Local Group(Simply flying)
Qantas to Exit Jetstar Japan, Sell Minority Stake(Airways Magazine)
ジェットスター・ジャパン、カンタスが全株譲渡へ JAL・政投銀ら新ブランド(Aviation Wire)