
インスブルックでの6日間もいよいよ最後の日。
今日は街からバスで約1時間、標高2,020mに位置する村、キュータイ(Kühtai)を目指します。
ここは山岳リゾートと冬はスキーの聖地として知られていますが、夏は高山植物が咲き誇り、宝石のような湖が点在するハイカーにとっての楽園でした。
標高2,000mの村へ、快適なバス旅
駅前の旅の始まりは、ホテルの近くのバス停から、4166番の路線バスに乗車します。

このキュータイ行きのバスは、どうやら土日祝のみの季節運行(?)のような感じで、この日(2025年6月22日)が、今年最初の運行開始日だったようです。
バスの中から見える景色が、街並みから深い森へ、そして木々が低くなり草原へと変わっていく様子は、まさに「山岳リゾートへ向かっている」という実感を高めてくれます。
約1時間で到着したキュータイの村は、すでに標高2,000mを超えています。
バスを降りた瞬間に感じる、キリッと冷えていながらもどこか優しい空気。
深呼吸するだけで体が浄化されるような、最高のスタートです。

「三つの湖」を目指して、空中散歩の第2章
村の入り口近くにある「ドライ・ゼーン・バーン(Drei-Seen-Bahn)」という名前のチェアリフトに乗って、さらに上を目指します。

このリフトの名前は、直訳すると「三つの湖のリフト」、その名の通り、この上には美しい三つの湖が待っています。
眼下には、キュータイの村と、その奥に広がる巨大なダム(フィンステアタール貯水池)の壁が見えてきます。
写真には写っていませんが人工物であるダムが、チロルの荒々しい山肌と見事に調和している姿は、この地の人々がいかに自然と共生してきたかを物語っているようです。

リフトを降りると、そこは標高約2,400mの世界。
ここから、3つの湖を巡りながら街まで下るハイキングの始まりです。

静寂に包まれた「ミドラー・プレンダーレ湖」
しばらく歩くと、一つ目の大きな湖、ミドラー・プレンダーレ湖(Mittlerer Plenderlesee)が見えてきました。
山小屋「ドライ・ゼーン・ヒュッテ」のすぐ近くに位置する、三つの湖の中で最もアクセスしやすい湖です。

透明度が非常に高く、風がない日には周囲の岩山が完璧な鏡合わせのように水面に映し出されます。

お勧めポイント: 湖畔には絶景を楽しめるベンチが設置されています。
歩みを止めて、ただ静かに水面と山々を眺める「何もしない贅沢」を味わうのに最高の場所です。

アルペンローズのピンク色に染まるトレイル
歩き始めてすぐに目に入ってきたのは、鮮やかなピンク色の花々。
これはアルプスの初夏を代表するアルペンローズ(Alpenrausch)です。

岩の間から顔を出すピンクの小さな花束が、灰色の岩肌を彩り、まるで山全体が私たちの旅の終わりを祝ってくれているかのようです。
道は比較的緩やかで、空の青さをそのまま映し出したような澄んだ水たまりや、小さなせせらぎが至る所にあります。
最も標高が高いところにある「オベラー・プレンダーレ湖」
アルペンローゼの咲き乱れるトレイルを登りきると、2つめの湖、オベラー・プレンダーレ湖 (Oberer Plenderlesee)が見えてきました。
周囲は高い樹木がなく、荒々しい岩肌に囲まれた、より「高山」らしい力強い景観が特徴です。
水面は驚くほど静かで、周りの険しい山々を鏡のように映し出しています

お勧めポイント: トレイルの最も高い地点にあるため、ここに辿り着いた時の達成感はひとしおです。
空の色をより近くに感じられる、静謐な雰囲気が魅力です。
緑の草原の中のヒルシェーベン湖
そして、最後・・三つ目の湖、ヒルシェーベン湖 (Hirschebensee)へ到着しました。
山頂駅からキュータイの村へと下るトレイルの途中に位置している湖で、これまで通ってきた上方の二つの湖に比べると、周囲に緑の草原が広がっており、より穏やかで牧歌的な雰囲気を持っています。

わたし達はここから下っていったのですが、道中この湖を目指して登っていくたくさんの人たちとすれ違いました。
驚くのは杖を突いている年配の方が多いこと!
ふもとの村(標高約2,020m)から湖(標高約2,164m)までは約140mほどの標高差があります。
登山道を使うとかなり時間がかかりそうですが、皆さん、涼しい表情なんですよ!
わたしは、麓にやっとこさ下りてきただけで、もう・・ヘロヘロ、でした。

6日間のハイキングを終えて
インスブルックを中心とした6日間のハイキング旅。 毎日、違うバスに乗り、違うリフトで登り、違う景色に出会ってきました。
- ノルトケッテの垂直な岩壁
- ツィルベンヴェークの優しい松林
- ゼーフェルトの爽快な稜線
- シュトゥーバイの壮大な谷間
- オーバーパーファスの穏やかな草原
- そして、このキュータイの空に近い湖
チロルの山々は、どんな時も私たちを温かく、時に厳しく迎えてくれました。
持参したランチを絶景の中で食べたこと、道に迷って歩き続けた砂利道、山小屋で飲んだ格別のビール……その一つひとつが、一生忘れられない宝物です。
「またいつか、この空の色を、花の香りを、山の空気を感じに訪れることができればいいな」
私たちは夕暮れ時のバスでインスブルックの街へと戻りました。
(シリーズの終わりに)
全6回にわたるインスブルック・ハイキングブログをお読みいただき、本当にありがとうございました!
皆さんの次の旅の計画に、少しでもお役に立てれば嬉しいです。
チロルの風が、いつかあなたにも届きますように。